| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-G-220 (Poster presentation)
岩礁潮間帯では、垂直方向に様々な固着生物(海藻類やフジツボ類など)が狭い範囲で分布している。このような生物分布パターンを帯状分布といい、世界中の海岸で普遍的に観察される。
東北地方太平洋沖地震による岩礁潮間帯生物群集の帯状分布の変化について扱ったこれまでの研究は、中潮帯の種だけを対象に地震後の2年間と地震前を比較したものであっため、潮間帯全域での帯状分布のより長期間の経時変化は明らかにされていない。
そこで本研究では、約50 cmの沈降が生じ、最大波高10 m以上の津波が襲来した三陸の5海岸において、23岩礁の平均潮位を中心に縦200 cmの潮間帯全域を包含する調査区を設置し、2011年から2016年の各年の夏に固着生物(海藻と固着動物)の優占種10種について高さごとの被度を計測し、各種の帯状分布とアバンダンスの地震直後からの5年間の変化を調べた。
その結果、アバンダンスについて見てみると、10種のうち4種が地震後一時的に増加し、3種が一貫して減少し、2種が一貫して増加し、1種が大きく変動していた。これらのうちで、一時的に増加した種では、帯状分布が一旦上部に拡大してから帯状分布下部でのアバンダンスの減少が生じていた。一方、一貫して減少した3種では高度にかかわらずアバンダンスが減少していた。また、アバンダンスが増加した5種のうち4種で帯状分布の年変化は、年とともに小さくなる傾向が見られた。これらのことから、地震後の帯状分布は未だに回復の途中にあるものの、回復速度自体は低下しつつあることが推察された。