| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-G-224  (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林における樹種間の鱗翅目群集集合決定要因

*阿部智和(東京大学大学院農学生命科学研究科), Rajesh Kumar(Central Muga Eri Research & Training Insttitute), Martin Volf(Czech Academy of Sciences), Martin Libra(Czech Academy of Sciences), 阿部永(千葉大学大学院理学研究科), 福島宏晟(千葉大学大学院理学研究科), 向後良亮(千葉大学大学院理学研究科), Vojtech Novotny(Czech Academy of Sciences), 村上正志(千葉大学大学院理学研究科), 鎌田直人(東京大学大学院農学生命科学研究科付属演習林北海道演習林)

植食性昆虫の集合(assemblage)には植物の系統が影響するという報告があるが,植物の形質の影響を明らかにした例は少ない。一方、形質ごとに系統制約性が異なるため,形質が系統と独立に植食性昆虫の集合に影響する可能性が考えられる。また植食性昆虫の種はスペシャリストとジェネラリストに二分して扱われることが多いが,ジェネラリストについてホストの系統的保守性を考慮した研究は稀である。そこで本研究では,植食性昆虫をスペシャリスト,保守的ジェネラリスト,非保守的ジェネラリストに類別し,植物のどの形質がそれぞれの集合パターンと関係しているのかを調べることを目的とした。
北海道大学苫小牧研究林にて,0.15ha内の11科19種135本の樹木から203分類群9815個体の葉食性鱗翅目幼虫を採集した。植物の形質として、葉のSLA,CN比,トリコーム密度,硬さ,縮合タンニン濃度,総フェノール含量を使用した。これら植物の形質の系統制約性を解析し,植食性昆虫の集合に対する形質と系統の影響を,RDAとマンテル検定により調べた。
タンニンのみ有意な系統制約性を示した。保守的・非保守的ジェネラリスト両方の集合でタンニンの影響が認められたが,非保守的ジェネラリスト集合にはタンニンを除いた形質全体の影響も認められた。スペシャリスト集合では植物の系統の影響のみ認められた。
本研究の結果,植食性昆虫の特殊化の程度により,集合を形成する植物の系統・形質の影響が異なっていた。すなわち、より特殊化した植食者種は系統制約性の強い形質の,高度に広食性の植食者種は物理的防御など系統制約性が弱く分散的な形質の影響を受けていた。このように反応が多様な植食者集合に対して有効に防御するために、植物は系統制約性の強い形質と弱い形質の両方を併せ持つ必要があるものと考えられた。


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