| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-G-230  (Poster presentation)

東京都奥多摩町のシカ食害地における糞虫の動態

*金地伊織(明大・農), 新井一司(東京都農総研), 倉本宣(明大・農)

 森林に生息する糞虫群集の生息場所は、シカを中心とした大型哺乳類の過増加や人間の林地利用による環境改変を受ける。そこで、それぞれの要因について糞虫群集へ与える影響について調査を行うことが必要である。また,特に人工林に構成される糞虫群集の保全については林業との兼ね合いが必須である。
 そこで本研究では、人工林における伐採・再造成やシカの増加に対して、糞虫群集がどのような動態を示したかを総合的に考察し、糞虫群集の生息に配慮した人工林の利用方法を模索することを目的とした。
 調査は東京都奥多摩町氷川に位置する東京農業大学奥多摩演習林内で行った。演習林内の再造成地に1地点、針葉樹林、広葉樹林にそれぞれ2地点の合計5地点を調査区として、トラップによる糞虫相調査と環境調査を行った。
 結果としては、再造成地は伐採から3年経過した時点で、糞虫群集の多様性が5地点中最も低かった。一方、その再造成地に隣接する針葉樹林は5地点中では中程度の多様性を保持しており、多様度及び均衡度はもう一方の針葉樹林の調査地点よりも高い数値となった。
環境調査については、再造成地とその他の地点との間で、光環境において顕著な差が見られたが、土壌硬度、土壌水分量には差が見られなかった。また、植生調査の結果より、当地におけるシカの過増加による生態系への影響は比較的小さいものであることが推察された。当地で行われた伐採、再造成が周囲の林地の糞虫群集に大きな影響を及ぼさなかった要因としては、小規模の区画においての施業であったことが挙げられると推測される。
 今後は、より広域的な調査を行う必要があるほか、施業方法や伐採からの経過年数の異なる人工林において調査を行い、より適切な林地の利用方法を追求したいと考える。


日本生態学会