| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-G-231 (Poster presentation)
環境DNA分析による魚類等大型水棲生物種の検出手法は、種特異的な検出系から次世代シークエンサーを用いた複数種の網羅的な検出系(メタバーコーディング)へと発展してきている。本研究では、滋賀県内の河川において実施した既存の捕獲等による調査の結果と、MiFishユニバーサルプライマーを用いたNGS分析による魚類相調査の結果とを比較・検討し、環境DNAメタバーコーディング手法の淡水魚類相調査での有用性を示すことを目的とした。
2015年に滋賀県日野川支流の佐久良川の中流域で捕獲調査と環境DNA分析による調査を実施した。河川内に約200mの調査区画を1ヶ所所設定し、その上流端および下流端にて、河川横断方向に3か所ずつ、それぞれ0.5リットル採水した。その後、区画内に生息する魚類を約120人で可能な限り捕獲した。水試料から環境DNAを抽出し、メタバーコーディングに供した。種判別の際、解析対象の遺伝子領域内に明瞭な塩基配列の差が無い種どうしは複合種としてまとめた。
結果、直接捕獲では20種、環境DNA分析では5複合種と23種が検出され、合わせた検出種数は5複合種と31種で、共通して検出された種の割合は90%であった。環境DNA分析でのみ検出された種のうち1複合種と5種は、2005年から2016年の間ほぼ毎年継続して行われている同捕獲調査で現在までに捕獲記録がある種であった。
今回の結果では、両手法で検出された種の多くが一致し、そして環境DNA分析では直接捕獲に比べて多くの種が検出された。また、環境DNA分析のみで検出された種の中には、同じ河川で直接捕獲記録のある種が見られ、それらの種が実際には付近に生息しているものの、今回の捕獲調査では捕らえられなかったという可能性が示唆された。さらに、環境省レッドリスト記載種も含まれていたことから、環境DNA分析は生息密度の低い種も直接捕獲より検出する能力が高いと考えられる。