| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-G-232 (Poster presentation)
ヨーロッパでは中大型獣の個体数増加や分布回復に伴い野生動物と人間との軋轢が増加している。生物多様性ホットスポットの一つであるバルカン半島には多様な野生動物が生息しており、生態系保全上の重要な地域となっている。バルカン半島の一国のブルガリアでは、EUへの加盟による社会状況の変化に伴う土地利用変化や従来から行われてきた密猟などの要因によって野生動物の生息状況に影響を与えている可能性がある。そこで本研究では、ブルガリア中央部の農村地域において中大型獣を中心とした野生動物の出没頻度と周辺の景観構造との関係を明らかにすることを目的とした。
中大型獣の生息状況を明らかにするために2015年6-7月と2016年3-8月に自動撮影カメラを森林やゴミ捨て場などの計18地点に設置した。また、GISと地理情報データ (Corine Land Cover maps 2012) を用いて、調査地点の周辺に発生させたバッファ内 (0.5、1、2km) の土地被覆 (森林、低木林・草地、農地、集落やゴミ捨て場などの人為環境) の面積を求めた。中大型獣各種の出没頻度と調査地点周辺の土地被覆の関係を把握するために、非計量多次元尺度構成法 (NMDS) を用いて解析した。
延べ430カメラ日の努力量で計312枚が撮影され、10種を確認した。このうち、3調査地点以上に出現した8種を対象として解析を行った。中大型獣の出没状況の変化は森林から農地への土地被覆の変化に強い関連が見られたが、低木林・草地や人為環境との関連は弱かった。しかし、バッファスケールが小さくなるほど低木林・草地や人為環境との関連が強くなった。森林、低木・草地のような自然環境では森林性の有蹄類が見られたが、森林・農地・人為環境のモザイク景観では中型食肉目が見られた。特に、アカギツネは人為環境に関連を示し、ヨーロッパアナグマは農地に関連を示した。種によって環境への反応は異なっているが、これは人為改変地が野生動物の生息環境を決める要因の1つになっていることを示唆した。