| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-G-234 (Poster presentation)
干潟域や岩礁域を含む潮間帯では,干潮時にタイドプールができ,魚類が取り残される.南北約1200 kmにわたる琉球列島には,数多くの干潟があるにもかかわらず,干潟域に出現する魚類群集の知見は少ない.琉球列島は,過去に隔離と接続を繰り返しており,島ごとに独自の生物相を持つ.島嶼間あるいは島嶼内の干潟間で,魚類群集がどのように異なるかは,各群集の成り立ちの背景となる地理的,環境的要因を知る上で興味深い.
本研究では,琉球列島の干潟域に取り残された魚類の群集構造を明らかにし,その地理的変異を考察した.2015,2016年5–9月に西表島から種子島にいたる6島29地点,九州の6地点で調査を行った.干潮時に設置したコドラート(1 m2;8–28個)内の全ての魚類を採集し,出現種と個体数を記録した.
干潟域に出現した科および種数は,15科95種であり,岩礁域(12科56種: Arakaki et al., 2013)より多かった.干潟域ではハゼ科が総個体数の97.2%を占めていたが,岩礁域では60.3%と低かった.科数や種数と緯度の関係をみると,岩礁域と同様に奄美大島以南で多様性の高い場所(5科,15種以上)が多かった.一方,緯度と種数の相関関係は,岩礁域と比べて緩やかであった.以上のような違いは,干潟域では優占種がハゼ科魚類に限定されていること,一時的に出現する魚種が多く,岩礁域と比べて群集構造が不安定であることに起因すると考えられた.また,クラスター分析による群集解析の結果,調査地点間での類似度が低く,岩礁域と比べ,地点ごとの独立性が高いことが明らかになった.九州はおおむね1つのグループとなり,種子島が比較的類似した.また,先島(宮古,石垣,西表)と沖縄島は,混在しつつも底質ごとに小さなグループを形成した.このような群集構造の相違を示したのは,緯度に伴って構成種が温帯種から熱帯種へ置き換わり,同じ島内であっても底質ごとに構成種が異なるためだと考えられた.