| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-G-235  (Poster presentation)

鉛直分布と安定同位体比組成からみたウナギ類幼生の摂餌特性

*恩田拓尭(東京大学大海研/新領域), 竹茂愛吾(東京大学大海研), 三宅陽一(東京大学大海研/新領域), MJMiller(日大生物資源), 黒木真理(東大院農), 青山潤(東京大学大海研/新領域), 木村伸吾(東京大学大海研/新領域)

北赤道海流域では,沿岸域で成育するニホンウナギをはじめ,外洋域で成育するノコバウナギなどの様々な生活史特性を持ったウナギ目魚類の仔魚(レプトセファルス)が分布している.しかし,同海流域において,これらのレプトセファルスの分布特性は明らかにされていない.また,ウナギ目レプトセファルスはマリンスノーを摂餌することが示唆されているが,その摂餌生態は依然として不明な点が多い.そこで,本研究では,北赤道海流域におけるウナギ目魚類のレプトセファルスの鉛直分布と摂餌特性を検討することを目的とした.

2013年の10月から11月にかけて,北赤道海流域において大規模な調査航海を行った.グリッド状に設置された測点(37測点)において生物調査(層別採集)と物理観測を行いレプトセファルスの分布特性を検討した.なお,生物調査については夜間に行った.また,マリンスノーを含む懸濁態有機物(POM)と脱脂処理を行ったレプトセファルスを用いた炭素窒素安定同位体比(δ13Cとδ15N)分析によってレプトセファルスの摂餌特性を検討した.

ニホンウナギなどの沿岸域に成育場を持つ分類群の多くは,水温躍層の上層部付近で高密度に分布していた.一方で,ノコバウナギ科などの外洋域に成育場を持つ分類群の多くは,表層混合層内で高密度に分布していた.また,水温躍層で高密度分布していた分類群は,ウナギ目レプトセファルスの中でも低いδ13Cと高いδ15Nを,表層混合層で高密度分布した分類群は高いδ13Cと低いδ15Nを示し,レプトセファルスの摂餌特性は鉛直分布パタンや生活史特性で異なることがわかった.POMの安定同位体組成は,窒素固定などの影響によって水深間で大きく異なっていたことから,レプトセファルスの安定同位体組成の差異は摂餌する水深を反映している可能性があると考えられた.
 以上のことから,ウナギ目レプトセファルスの分布および摂餌特性は,それぞれの生活史特性に大きく影響されることが示唆された.


日本生態学会