| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-G-236 (Poster presentation)
生物遺骸は高濃度の栄養物質を提供するホットスポットであり、その直下・周辺には特異的な生物群集が形成されると考えられる。実際、深海及び沿岸の海底では、生物遺骸に特異的な微生物群集が形成されることが、近年の研究で示されている。干潟は大気と泥と海水が境界面を形成するユニークな環境であるとともに生物の遺骸を始めとする多くの有機物が堆積する場所である。しかし、生物遺骸が形成するホットスポットに関する知見は干潟ではほとんどない。そこで本研究では、干潟環境においても生物遺骸が供給された際には特異的な微生物群集が形成されるという仮説をたて、それを検証する実験を行った。
実験は仙台市東谷地干潟において、2016年6月8日から7月20日にかけて行った。実験にあたっては、多数の穴を開けた小型ポリ容器に、マイワシ (S.melanostictus) を底泥と共に詰め、これを底泥12 cmの深さに5 m間隔で3×3の格子状に9カ所埋設した(実験区)。また、距離の効果を検証するため、実験区のそれぞれのポリ瓶から10 cm の位置に1本ずつ、底泥のみ詰めたポリ瓶を埋設し、実験区と同様に埋設した(周辺区)。さらに対照区として、底泥のみを詰めたポリ瓶を、実験区から5 m以上離れた位置に6本埋設した。埋設後、2、9および42日目に、実験区と周辺区からは3本ずつ、対照区からは2本ずつ埋設したポリ容器を回収し、容器内の底泥を採取した。採集した底泥試料は、DNAを抽出したのち、細菌については次世代シーケンサによりメタゲノム解析を行った。繊毛虫についてはSemi-nested PCR法により18S rRNAを増幅し、DGGE法により多様性を評価した。これら分子データを用いて繊毛虫及び細菌群集相を推定し、干潟において生物遺骸が特異的な群集形成を導くか検証する。