| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-G-239 (Poster presentation)
日本に生息するコウモリの多くはねぐらや採餌場所として森林を利用する。国内の森林の約4割を占める人工林は、コウモリの生息地として低質と考えられているものの、人工林におけるコウモリ研究や森林の林分構造とコウモリの飛翔活動量との関係についての研究は限られている。一方、コウモリ類は夜間に超音波を発し飛翔するという特性から、コウモリの音声を検知し活動量を調査することができる。そこで本研究はカラマツ人工林と落葉広葉樹林の林分構造と、コウモリの飛翔活動量の関係について音声解析を用いて検討することを目的とした。
音声解析を行うために2010年から2016年に主に栃木県で捕獲し種同定されたコウモリの音声を基に音声ライブラリーを作成した。正準判別分析を行ったところ全体での判別率は86.7%であった。このライブラリーを林内で録音された音声がどの種かを予測するのに使用した。
森林内でのコウモリの音声の録音調査及び毎木調査は2016年の6月から9月に栃木県奥日光地域のカラマツ人工林23地点、落葉広葉樹林11地点、計34地点で行った。日没から6時間後までの録音記録から1.5時間分を抽出し音声の種予測を行ったところ10種が予測された。そのうち予測個体数の多かった種及び全種(6時間分)についてGLMM(一般化線形混合モデル)による解析を行った。その結果、モモジロコウモリ、ウサギコウモリ、モリアブラコウモリ、全種は最大胸高直径が活動量に対して正の効果となった。モモジロコウモリなどは太い木が存在し比較的オープンな林分構造となる老齢林内で活動量が高くなると考えられた。一方、ヤマコウモリとヒナコウモリは林分構造の効果が見られなかった。このような違いは、コウモリの種ごとの翼の形態や音声構造の違いに関係していると考えられる。