| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-G-242  (Poster presentation)

撹乱時期の違いが低木層クモ群集へ及ぼす影響

*丁野梨沙, 吉田智弘(東京農工大・農)

樹上の節足動物の群集構成や個体数は、枝葉のバイオマスや密度のような生息地構造によって規定される。撹乱は樹上の生息地構造の消失と回復の過程をもたらし、節足動物群集の移入と再定着を促す。低木は樹木として枝葉の構造を有しつつ、高木に比べ階層構造が発達しないため群集構成の階層の異質性が現れにくい。そのため、生息地構造の変化と節足動物群集の動態における相関を取り扱うのに低木は適している。本研究では、低木を対象とし、生息地構造の変化に対する節足動物の反応を明らかにすることを目的とした。

東京都内のクワ畑において、2016年4月から10月にかけて隔週でクワ上の節足動物群集およびその生息地を調査した。この畑のクワは、毎年3月か6月のどちらかに一度刈り取られる。この撹乱により、クワは根元のみが残り、2~3か月で最大高が2 m程度に生長する。クワの枝をビーティングすることにより節足動物を回収した。節足動物はアリ科を除き目レベルで同定をし、翅の有無によって「無翅」と「有翅」に区分した。動物群個体数と生息地構造の相関をみるために、応答変数として群集の個体数、説明変数として葉密度、枝密度、下層植生高を用いてモデルの推定をした。結果として、有翅の個体数は葉密度と正の相関を示し、移動能力が撹乱への対応に重要であることを確認した。また、分類群内でも生育段階によって無翅の状態がある場合、無翅の時期や樹上構造の利用の有無によって撹乱への対応が異なることを明らかにした。


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