| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-K-327 (Poster presentation)
限界値の定理では、動物が採餌効率を最大化するには、餌パッチでの採餌効率が全体の平均採餌効率以下になったときに次の餌パッチに移動するのが最適な採餌戦略であるとされる。この戦略に基づくと、動物はパッチの採餌効率が高いときはパッチに長く留まり、パッチの採餌効率が低いときは早く次のパッチに移動すると考えられる。オオミズナギドリの1日採餌旅行では専ら雛に与える餌を獲り、また非捕食者対策として、日の出後に出発し日没後でないと帰巣し雛に餌を与えることができないと考えられている。本研究では夜間しか帰巣しないオオミズナギドリを対象として、限界値の定理の予測と野外で記録した採餌行動とを比較した。
2016年夏季に岩手県船越大島で繁殖するオオミズナギドリ7個体にGPS記録計を装着し、合計8回の1日採餌旅行について1秒間隔の位置情報を記録した。オオミズナギドリに装着したビデオの映像から、オオミズナギドリはある餌パッチに滞在して採餌する間に、短い着水と飛翔を繰り返す特徴が見られているため、GPSデータから5分以下の飛行と着水を繰り返しているところをパッチ内での採餌とした。各パッチについて、着水回数/パッチ滞在時間を採餌効率とした。各パッチ滞在時間と採餌効率の関係を調べたところ、限界値の定理に反して、オオミズナギドリではパッチでの採餌効率が高いときほどパッチ滞在時間が短くなった。また、1日採餌旅行の中でも序盤でのパッチ滞在時間は短く、終盤でのパッチ滞在時間は長い傾向が見られた。
このことから、日没まで時間がある場合はより良い餌パッチを探すために餌パッチを早く離脱し、日没まで時間がない場合は悪い餌パッチでも長く滞在するというように、オオミズナギドリは夜間しか帰巣できないという制約に合わせた採餌戦略を行っていると考えられる。