| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-K-335  (Poster presentation)

地域猫における採食と行動圏の調査

*藤井さくら(倉敷芸術科学大学)

地域猫とは、地域住民の認知と合意が得られている特定の飼い主のいないネコであり、部分的に人の管理下にあると言える。地域猫はなまじ馴染みのある動物であるからか、あるいは関心の低さによるものか、生態に対する調査・研究が野生動物ほど行われてこなかった。そこで本調査では、野生動物に対して用いられる手法を参考にして、地域猫の採食行動や行動範囲を明らかにすることを目的とした。
捕獲が可能な地域猫3頭(オス;ネコA、オス;ネコB、メス;ネコC、年齢不明、避妊・去勢済み)を調査の対象とした。ネコを捕獲し、体重を測定した後、GPSロガーと自動撮影カメラを取り付けた首輪(総重量;69 g)を装着し、放獣した。1頭あたり7日間の採食物や行動範囲のデータを基に、ネコの採食行動と、1日の最長移動距離と行動範囲を算出した。
最長移動距離と行動範囲の中央値は、ネコA,222 m,36496 m²;ネコB,344 m,82809 m²;ネコC,226 m,25063 m²であった。ネコA、Cでは、地域猫活動による食餌以外のものが確認された。写っていた採食物は、人から与えられた食物やゴミ箱の中のゴミであった。また、全ての個体で室内に入っていた様子が確認できた。
ネコA、B、Cの行動範囲が明らかとなり、3個体の行動範囲が7日間でそれぞれほぼ一致していたことから、個体ごとに決まった行動範囲を持っていたことが示唆された。人がネコに地域猫活動による食餌以外の食物を与えていた様子や、ネコが室内に入っていた様子が確認されたことから、地域猫と人の距離は物理的に近いことが示された。今回調査した地域猫3頭は、それぞれ行動の特徴が異なっていたことから、地域猫という一群として考えるのではなく、“群れを作らない猫”として認識する必要があると考えられた。


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