| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-K-339 (Poster presentation)
世界には、絶滅の危機にさらされている生物種が多数いるが、コウノトリCiconia boycianaもその一つである。そこで1999年に国内最後の生息地であった兵庫県豊岡市内にコウノトリ保全の中心機関として、兵庫県立コウノトリの郷公園(以下、郷公園)が設立され、2005年には、再導入・野生復帰事業が開始された。現在豊岡市域を中心に90羽以上のコウノトリが野外に生息しているが、これらのほとんどは、カラーリングで標識されている。そのため、継続的なモニタリングが可能になり、野外個体の生態が明らかになりつつある。
コウノトリの配偶システムは一夫一妻であり、つがいでなわばりを持ち、一旦つがいになると配偶者を変えない事、そのため、配偶者選択が非常に厳しい事が分ってきた。また、現在のコウノトリ個体群には、非繁殖個体(フローター)が多数存在するが、その中には豊岡を含む但馬地方にとどまり続ける個体と全国、さらには韓国へも移動する個体がいることが明らかになった。また、但馬にとどまる個体の中には、つがいのなわばり内に留まることを容認された個体(居候)がいることも明らかになっている。この様に、一概にフローターと言ってもその生活様式は様々である。そこで、本研究は、フローターの生活様式に着目し、これらを適切に区分することによって、厳しい配偶者選択を経てつがいが誕生するプロセスを解明することを目的とする。
今回の発表では、全国から郷公園に寄せられた識別個体の目撃情報と郷公園飼育オープンケージへの飛来情報を元に、フローターがつがいになるまでの動向をまとめ、紹介するが、豊岡でつがいとなり繁殖を開始した個体は、成熟前の3年間、豊岡周辺にとどまり続ける傾向をもつ事が明らかとなった。この後、さらに詳細な解析を行い、これらをふまえて、コウノトリのつがい形成のプロセスについて考察する。