| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-K-343  (Poster presentation)

屋久島山頂部におけるヤクシマザルの季節移動

*本田剛章, 半谷吾郎(京都大・霊長研)

環境とそこに生息する動物の関係を理解することは、生態学の大きな目的である。垂直方向の環境勾配は、高度上昇に伴う温度低下で小さな空間に多くの環境が凝縮する。屋久島は山頂が標高1,936mの大陸島で、植生は垂直分布し、標高1,700m以上の標高帯はササ類の1種であるヤクシマダケ(Pseudosasa owatarii:以下ササと略)が優先するササ原地帯である。屋久島の低標高域や中標高域で、異なる植生に生息するニホンザル(Macaca fuscata yakui:以下サルと略)の研究がなされてきたが、山頂部に生息するサルの生態はほとんど調べられていない。

屋久島山頂部のサルは、ササ原を利用し、ササを採食していることが知られる。しかし、ササ原の利用は通年で見られず、冬季には標高を下げた森林へ移動している可能性が高い。本研究では、屋久島山頂部のササ原の不フェノロジー調査とルートセンサスを行い、サルの食物と推測されるササの部位ごとの季節変化とサルのササ原の利用の関連を調べた。

ササの芽とタケノコはおおよそ4月から10月の間存在し、成熟葉は通年で存在した。サルはササ原でササの芽の髄とタケノコを採食していた。ほかの品目の採食はほぼ見られなかった。また、サルは4月から10月にかけてササ原に滞在し、11月になるとサルは草原で発見されなくなった。つまり、屋久島山頂部のササ原でサルの食物となるササの芽とタケノコのアベイラビィティが、サルのササ原の利用を決定しており、サルがササ原と森林を季節的に移動していることを強く示唆する結果となった。


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