| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-K-346 (Poster presentation)
ニホンジカ(Cervus nippon)は狩猟期間になると鳥獣保護区へ移動することが確認されており,北海道東部に位置する釧路地方の鳥獣保護区は,狩猟期間にニホンジカ(エゾシカ:C. n. yesoensis)が国内でも最も高密度状態になる.狩猟はシカ類の行動に影響を与えるとされるが,正確なニホンジカの位置情報を基に狩猟期間と行動の関係を明確に解明した事例は少なく,釧路地方のエゾシカも狩猟圧を避けて鳥獣保護区を実際に利用しているか不明である.そこで本研究ではGPS首輪型発信機を用いて,釧路地方に生息するエゾシカの狩猟期間と禁猟期間における鳥獣保護区の利用状況の変化を明確にする.
釧路地方に生息するエゾシカの行動を明確にするために成獣メス20頭にGPS首輪型発信機(Lotek社iridium型)を装着し,3時間ごとに位置情報を取得した.a-LoCoH法にて月ごとに95%行動圏を算出し,行動圏と鳥獣保護区が重なる部分を保護区行動圏とした.狩猟期間と禁猟期間で保護区行動圏の面積(ha)をGLMMにて比較検証した.その結果,釧路地方のエゾシカの保護区行動圏の面積は,狩猟期間と禁猟期間には,有意な差は見られなかった(P=0.79).釧路地方のエゾシカは個体によって保護区行動圏の面積は異なることが証明された,一方で研究対象地ではエゾシカは,狩猟期に選択的に鳥獣保護区を利用しているとは断言できなかった.