| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-401  (Poster presentation)

伊豆諸島における国内外来種ニホンイタチと外来昆虫との関係

*土井学(千葉県立中央博物館)

伊豆諸島八丈島では、1959-1963年にネズミ駆除を目的にニホンイタチが放獣された。導入により、それまで島の農業に打撃を与えていたネズミ害を低減させることができたが、ニホンイタチの捕食対象はネズミだけにとどまらず、オカダトカゲなどの在来種の激減を招くことにもなった。1980年代のイタチの糞内容物調査から、当時既に絶滅寸前にまで個体数が落ち込んだトカゲから昆虫類へと捕食対象が変化したことが知られるが、八丈島には地表徘徊性の固有種ハチジョウノコギリクワガタが生息しており、影響が懸念されるところだった。そこで2013年1-12月に八丈島のニホンイタチの糞を収集・分析し、どのような昆虫類が捕食対象となっているのかを調べた。
 その結果、ニホンイタチは5-6月の発生時期にハチジョウノコギリクワガタを集中的に捕食しているほか、1970-1980年代に新たに島に侵入した国内外来種の昆虫類を通年利用していることが分かった。外来種を取り巻く問題については、上位捕食者として在来種を駆逐したり、競合排除するケースが注目されることが多いが、餌資源となり得る昆虫類が定着した場合も、地域の生態系に影響を及ぼす可能性が考えられた。


日本生態学会