| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-402  (Poster presentation)

外来草本マルバルコウの発芽特性:なぜ駆除が難しいのか?

*藤原笙子, 中坪孝之(広島大・院・生物圏)

外来草本マルバルコウの発芽特性:なぜ駆除が難しいのか?

藤原笙子・中坪孝之(広島大・院・生物圏)

マルバルコウIpomoea coccinea L.は、北アメリカ原産のヒルガオ科の一年生草本で、大豆畑などに侵入し、強害雑草となっている。本研究では、野外における発芽状況の調査と、室内実験による発芽特性(温度、キズの有無、保存期間、光の影響)の検討を並行して行い、野外においてマルバルコウの発芽をコントロールしている要因を明らかにすることを目的とした。

野外調査は、広島県東広島市黒瀬川の土手で行い、前年にマルバルコウが確認された場所にコドラートを設置して子葉をつけた実生の数を毎週記録した。発芽は4月初旬から観察され、その後個体数は増加した。6月になると新規に発芽した個体は減少したが、7月に刈り取りが行われると新たな発芽が認められた。発芽は秋にも確認され、最も遅いものでは12月に子葉段階の個体が確認された。

種子発芽に対する温度の影響を、段階温度法(鷲谷,2010)で調べたところ、温度上昇系と下降系の間には有意差はみられず、春化処理などの特定の温度要求性は認められなかった。本種を用いた室内実験では種皮にキズをつけない限り発芽しないという先行報告があるが、本研究ではキズをつけない種子でも2割程度の発芽率が認められた。保存状態に関しては、1年間風乾状態で保存した種子、3ヶ月間野外の土中に埋めた種子も、保存の影響は認められなかった。一方、暗所にくらべ明所の方が有意に発芽率が高かった。このことから、草刈りは光環境の変化を介して発芽を促進した可能性が考えらえる。

以上の結果から、本種の種子は1年以上の寿命をもち、特定の温度要求性をもたないため、野外では長期にわたり発芽が続くものと考えられる。この性質のため、1回の刈り取りでは本種を根絶することは困難で、一度侵入すると駆除は非常に難しいと予想される。


日本生態学会