| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-412  (Poster presentation)

環境DNA分析を用いた琵琶湖・浜名湖周辺における特定外来生物ヌートリアの侵入初期探知

*本澤大生(龍谷大・院・理工), 小松鷹介(静岡県森林・林業研究センター), 山中裕樹(龍谷大・理工)

ヌートリア (Myocastor coypus) は、世界中に外来生物として生息している。日本においては、特定外来生物に指定されており、年間農業被害は1.2億円を超えるといった報告もなされている。このような外来種の駆除は、非常に駆除が困難である。なぜなら、外来種として日本に定着する生物は生命力・繁殖力が強いことが多く、短期間で爆発的な個体数の増加が起きるためである。そこで、個体数の少ない侵入初期に防除を行うことが重要である。本研究では、従来手法よりも検出能力が高いとされている環境DNA分析を用いて、未定着地域とされる琵琶湖・浜名湖周辺での分布調査を行い、外来生物の侵入初期探知を試みた。

琵琶湖周辺の51地点および浜名湖周辺の78地点で1地点500 mLの水を採取し、環境DNAの定性分析を行った。琵琶湖周辺での結果は、過去に目撃・捕獲情報が有る地点において環境DNAを検出された一方で、全くそのような情報の無い地点においてもヌートリアの環境DNAが検出され、新たな生息場所を捉えた可能性が高い。また、静岡県から愛知県にまたがる梅田川の多地点でヌートリアの環境DNAが検出され、浜名湖周辺では、愛知県寄りの南西部でヌートリアの環境DNAが検出された。これらの結果から、浜名湖周辺に生息する個体は、愛知県の個体群が供給源となっていて、梅田川はその経路の一つとなっていることが示唆された。
本研究により、環境DNA分析による分布調査は、半水棲の哺乳類を対象とした場合でも、短期間に少労力で、新たな生息場所や移動経路の予測、外来生物の場合にはその侵入初期探知に利用可能であることが示唆された。


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