| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-413  (Poster presentation)

環境DNAで外来種アメリカナマズを追う

*本郷真理(龍谷大・院・理工), 垣見直希(龍谷大・院・理工), 芝田直樹(龍谷大・理工), 加納光希(茨城大・水圏セ), 苅部甚一(茨城大・水圏セ), 平山拓弥(茨城大・水圏セ), 高尾大貴(龍谷大・理工), 山中裕樹(龍谷大・理工)

アメリカナマズ (Ictalurus punctatus) は2000年以降霞ヶ浦水系 (西浦、北浦、外浪逆浦) で優占種となり、在来種への悪影響を引き起こしている。近年、琵琶湖水系でも捕獲個体数が増加し定着が懸念されている。本種を捕獲できる手法は限られるため、広域調査には時間や労力が必要となる。そこで本研究では、低密度で生息する水棲生物の存在を検出が可能な環境DNA分析を用いて、霞ヶ浦水系と琵琶湖水系における本種の広域分布調査を実施した。琵琶湖水系の湖岸では2014年11月から2016年9月までの1年間に4回 (3月、6月、9月、11月) 環境DNA試料を得た。また、2016年3月に霞ヶ浦水系の河川、5月と8月に琵琶湖水系と霞ヶ浦水系での河川でも環境DNA試料を得た。得た試料からPCRによる分析を行い、本種の在不在結果を得た。まず、調査した琵琶湖水系の湖岸22地点のうち、捕獲例のあった3地点となかった2地点で環境DNAを検出した。また、捕獲例のあった琵琶湖の流出河川である瀬田川の岩場にて通年環境DNAが検出され、本種が生息しやすい場所だと考えられる。霞ヶ浦水系では、調査した38河川のうち1度でも検出された河川は32河川に上った。低水温の3月でも検出され、河川内での定着が示唆された。次に、霞ヶ浦水系の河川で測定した環境要因と在不在結果を用いて、琵琶湖水系の河川における潜在的な侵入確率を推定した。河川侵入確率は在不在結果が二項分布に従うと仮定した一般化線形モデル解析から算出した。その結果、算出した確率が50%を超えると推定された琵琶湖水系の河川は31河川中14河川に上り、特に捕獲例のあった地点や琵琶湖東岸で高確率を示した。この結果は湖だけではなく河川も含めたより詳しい本種の生息調査を行う必要があることを示している。以上のように本研究では、従来の調査手法に比べ時間や労力が少なく広範囲から本種の生息地と考えられる場所の推定ができ、環境DNA分析の有用性を示した。


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