| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-420  (Poster presentation)

小笠原諸島兄島における外来トカゲ、グリーンアノールの分布拡大

*丹羽貴寛(横浜国立大学大学院), 秋田耕佑(自然環境研究センター), 戸田光彦(自然環境研究センター), 小池文人(横浜国立大学大学院)

外来種管理及び根絶事業を効率的に行うには,外来種の分布拡大のメカニズムを知り,過去から未来までの分布を把握することは必要不可欠である.アメリカ原産の樹上性トカゲ類であるグリーンアノールは「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されており,小笠原諸島の固有種であるオガサワラシジミなどの在来昆虫を捕食しその個体数を著しく減少させるため生態系への被害が顕著である.小笠原諸島の兄島では,グリーンアノールの侵入が2013年に確認された.そこで環境省は,在来昆虫を含む生態系の保全のため,兄島に侵入したグリーンアノールの根絶を目指した事業を行っている.我々はこのプロジェクトの遂行のため,平成25年から27年の兄島内においてトラップなどで捕獲されたグリーンアノールの緊急防除データを用いて,以下3点を解明することを目指した.(1)グリーンアノールが好む環境を推定する.(2)グリーンアノールの兄島内の将来の分布域を予測する.(3)兄島におけるグリーンアノールの過去の分布を復元し初期侵入地を推定する.
環境パラメータと拡散パラメータを同時に推定するベイズ推定を行い,分布拡大モデルを作成した.また,この結果も用いてローカルな最尤法により過去の分布を逆推定した.
グリーンアノールは海岸などの裸地よりも植生の存在する地域を好んでいたが,全島に乾性低木林がひろがる兄島では植生間の差は明瞭でなかった.また過去の分布の復元結果によると,兄島南部に複数の初期侵入地が存在する可能性が示唆された.なお,本研究の一部は環境省による平成28年度小笠原地域自然再生事業グリーンアノール対策調査業務の一環として実施された.


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