| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-423  (Poster presentation)

アライグマの低密度域における効果的捕獲のための足跡残存適地推定

*廣瀬未来, 長谷川雅美(東邦大学)

 アライグマ(Procyon lotor)は、北アメリカ原産の中型哺乳類で、ペット由来の逸出個体が日本全国に定着し、農林水産業や公衆衛生、日本在来の生態系に対して様々な悪影響を及ぼしている。現在、高密度地域での重点的な捕獲対策がとられている。しかし、低密度地域でも希少種への深刻な捕食圧など生態系への被害は甚大であり、低密度地域での効率的な捕獲手法の確立が急務である。そこで、本研究では、低密度状況下でこそ、罠を設置する際に捕獲可能性の高い地域を絞り込むことで、捕獲効率を高めることが重要であるとの考えに基づき、まずアライグマの足跡残存地点の特徴を明らかにし、足跡残存適地を推定する手法を検討した。それにより、罠の設置地点を効果的に配置し、低密度下での効果的な捕獲を可能にする手法の確立を目指した。
 2015年7月から2016年6月にかけて、千葉県いすみ市・御宿町内の水田(計14地域、212枚)で踏査調査を行い足跡のあった地点を記録した。足跡の在・不在を応答変数、8種の環境変数(森林からの距離、水涯線からの距離、建築物からの距離、道路縁からの距離、1 km範囲内の森林面積、水田面積、市街地面積、地上開度)を説明変数、各調査地域をランダム効果とし、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて季節毎の足跡残存適地推定モデルを構築し、千葉県いすみ市周辺の足跡残存適地分布図を作成した。
 本研究の結果から、足跡の発見効率が向上する可能性が示された。また、今回作成した足跡残存適地分布図は、広域的な密度推定や生息適地予測と組み合わせることにより、アライグマの痕跡情報を取得するための有効なツールとなると考える。


日本生態学会