| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-O-426 (Poster presentation)
北海道西部の日本海側に位置する天売島は、ウミガラス(Uria aalre)やケイマフリ(Cepphus carbo)などの希少海鳥類の国内有数の繁殖地となっている。天売島では、侵略的外来種のドブネズミ(Rattus norvegicus)が定着しており、希少海鳥類をはじめとした生態系への影響が懸念される。そこで本研究では、天売島にてドブネズミの食性を明らかにし、海鳥に与える影響の把握を試みた。
2016年6月~9月に海鳥繁殖地を中心とし、森林、集落周辺12地点それぞれ70~720個/月(計1,450わな晩)かご罠を設置した。207頭捕獲されたドブネズミのうち、空胃を除く109頭(海鳥繁殖地82頭、森林12頭、集落周辺15頭)の胃内容を分析した。胃内容物は、茎・葉、種子・果実、不明(植物質)、羽毛・肉片、昆虫類、不明(動物質)の6項目に分類した。約79%の個体から植物質が検出され、また、約34%(37頭)の個体から羽毛・肉片が検出された。羽毛・肉片が検出された37頭のドブネズミのうち約89%(33頭)が海鳥繁殖地で捕獲した個体であった。さらに、月ごとの餌動物の構成を調べたところ、海鳥の繁殖期の6、7月は羽毛・肉片の割合が大きく、秋季に近づくと植物質の割合が増加する傾向にあり、餌資源の供給と利用可能性に応じて主要な餌種を変化させている可能性がある。
本研究より、海鳥の繁殖地に生息するドブネズミは、海鳥を積極的に捕食している可能性が示唆された。しかし、検出された羽毛については種同定ができておらず、また検出された羽毛が捕食されたものか、あるいは死亡個体を採食したものであるかも不明である。今後、ドブネズミによる希少海鳥類への捕食影響を把握するためには、さらなる解析が課題である。