| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-Q-446 (Poster presentation)
南根腐病は東南アジアやアフリカなどの熱帯から亜熱帯地方、日本では小笠原諸島や沖縄などの南西諸島にも分布しており、感染した樹木の多くを枯死に至らせる病気である。本病は担子菌類のシマサルノコシカケ(Phellinus noxius)を病原体とし、感染すると樹木の生育が劣ると共に葉の萎れや変色、落葉が起き、最終的に感染木の多くが枯死に至る。本菌は罹病木と健全木の根が接触することにより感染を広げるため、樹木の大量感染や枯死が危惧されている。世界自然遺産である小笠原諸島では本病による固有樹種の深刻な枯死被害が生じている。しかし、南根腐病による樹木枯死のメカニズムは未だ解明されていない。
そこで本研究では、小笠原諸島父島に生育するウラジロエノキとムニンネズミモチを対象に、南根腐病罹病個体と健全個体について気孔コンダクタンス、光合成速度、枝の通水性、葉と枝の水ポテンシャル等を比較することで、野外環境で南根腐病が樹木の生理特性に与える影響を明らかにすることを目的とした。
両樹種とも健全個体に比べて罹病個体で先端の枝の通水性が大きく低下していたが、健全個体ではこうした低下は見られなかった。また健全個体と比べて、罹病個体は気孔コンダクタンスが著しく低く、光合成速度は極度に低下していた。このことから、感染により枝の通水機能が低下し、物質生産の低下を引き起こすことが考えられる。一方で、明け方と日中の水ポテンシャルは、ムニンネズミモチでは健全個体と比べて著しく低かったが、ウラジロエノキでは差がみられなかった。これらの結果から、病徴の進行過程に樹種間で違いがあることが示唆された。