| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-Q-454 (Poster presentation)
日立鉱山跡地の土壌は精錬による亜硫酸ガスによって酸性を呈しているため,植物に対するAl毒性の影響が考えられる.本研究の目的は,日立鉱山跡地に自生するツルウメモドキ(Celastrus orbiculatus Thunb.) 実生のAlストレス耐性機構を化学分析及び組織化学的解析により解明することである.
現地で自生していた当年生実生を葉,胚軸,根に切り分け,ICP-OES分析に供し含有Al濃度を求めたところ,ツルウメモドキは全部位において1000 mg/kg 以上と高濃度にAlを蓄積していることが確認された.一般的にAlの主な毒性として根の伸長阻害を引き起こすことが知られていることから,特に根のAl耐性に着目し,続く実験を行った.当年生実生根の100%MeOH大量抽出物をHPLC/DAD分析,GC/MS分析に供した結果,Al解毒物質として報告がある縮合タンニン並びにリンゴ酸,クエン酸が検出された.しかし,いずれも一般的な植物に比して非常に低濃度であり,本植物におけるAl解毒機構に主要に関与するとは考えられなかった.次に,現地で採取した実生の根をルモガリオン染色した後、組織内のAlの局在を共焦点レーザー顕微鏡で観察した.観察の結果,主としてAlは表皮,内皮及び中心柱中央部の細胞壁に局在していることが明らかにされ,ツルウメモドキの主なAl耐性機構は細胞壁へのAl吸着による隔離によるものと考えられた.
以上の結果から,日立鉱山跡地に自生するツルウメモドキ実生はAlを植物体内に高濃度に含有するが,細胞壁への吸着によって体内のAlを感受性の高い細胞質から隔離し,Alストレス耐性を獲得している可能性が考えられた.