| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-Q-455 (Poster presentation)
植物群集では、植物個体は多くの場合他種あるいは同種他個体と隣り合わせて生育し、光、栄養などの資源をめぐる競争が起きている。一部の植物では、隣接個体が自分自身か「他人」か、また、近縁か非近縁かを認識し、形態を変える。ダイズなどにおいては、土壌栄養を制限したとき、自身と競争したときに比べ他個体との競争で根重量が増える。一方、ウスキツリフネでは、光を制限したとき、近縁個体間の競争に比べ非近縁間の競争で葉への資源分配を増やす。これらの結果は、非近親個体間(もしくは非自己個体間)の競争において、成長を制限する資源を獲得する器官への資源投資が多くなることを示唆するが、同一植物を用いてこれを実証した研究はない。
本研究では、マメ科クローナル植物シロツメクサを用い、不足資源が異なる条件を用意して、自己個体間競争と非自己個体間競争でバイオマス分配や形態がどのように変化するかを調べた。独立した二株を、自己同士あるいは採集地が互いに異なる組み合わせで一つのポットに植えた。光不足から栄養塩不足に至るよう5段階の資源供給条件を設定した。非自己個体との競争において、(1)貧栄養条件ほど地下部へのバイオマス投資が多くなり、資源を得やすいように根が細長くなる、(2)弱光条件ほど、地上部へのバイオマス投資が多くなり、形態が資源を得やすいように葉を広げたり葉柄が長くなる、という仮説を検証した。
結果、競争相手によるバイオマス分配の変化はみられなかった。しかし、非自己個体との競争において、貧栄養条件では根重当たりの根長が増加し、弱光条件において葉重当たりの葉面積が増加した。この結果は、シロツメクサが非自己個体との競争において、不足する資源を獲得する器官の形態を変えることを示唆し、「誰」と競争するかだけでなく、「どんな資源」を争っているかも感知し、戦略を変えていると結論される。