| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-Q-457  (Poster presentation)

タカノツメの葉内生菌相と葉中重金属濃度及び有機酸濃度の関係

*岡野由季, 富岡利恵, 村瀬潤, 竹中千里(名大院生命農)

タカノツメの葉内生菌と重金属濃度及び有機酸との関係
岡野由季、富岡利恵、村瀬潤、竹中千里 (名大院・生命農)

ウコギ科の落葉小高木であるタカノツメ (Gamblea innovans) はCdやZnを地上部に高濃度に蓄積する。重金属集積植物に内生する菌類が植物の金属耐性を高めたり、金属の蓄積を促進するという報告があることから、本研究ではタカノツメと葉に内生する糸状菌の関係に着目し、タカノツメ葉中Cd、Zn濃度、低分子有機酸濃度と葉内生菌の関係性を調べた。
名大構内のタカノツメの展葉前の冬芽、脇芽にポリエチレン袋を一定期間取り付け内生菌の感染を制御した葉を、6月、8月、10月に採取した。また、多田銀山のタカノツメから7月と10月に健全・病徴のある葉を採取した。採取した葉の元素濃度、有機酸濃度、内生菌相を測定した。袋がけ有無の処理をした名大サンプルではCd、Zn濃度が低い時期には多様な菌が存在するが、Cd、Zn濃度が高くなる/高い濃度の状況が続くことでA.alternataC.acutatum の増殖が抑制/淘汰され、C.gloeosporioidesG.mangiferaeが優占的な菌相に収束した。多田銀山ではC.gloeosporioidesが検出され、C.acutatumがCd、Zn濃度が最も低く、病徴の観られた地点で増殖していた。また、内生菌相と有機酸の間に関係性はみられなかった。分離頻度が高かったC.gloeosporioidesG.mangiferaeは植物に有用な可能性がある物質を生産でき、この2種はタカノツメにとって有益な内生菌の可能性がある。また、病徴発現に関与している可能性があるA.alternataC.acutatumは高濃度のCd、Zn下では生存や増殖が困難であり、タカノツメの代謝生理が健全であれば病原性を抑えられていることが考えられた。
以上のことからタカノツメは葉に集積した高濃度のCdやZnを利用して内生菌の病原力を制御し、自身に有益な種が増殖しやすい環境を創出している可能性が示された。


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