| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-Q-458  (Poster presentation)

フルンボイル草原における過放牧地の優占種Allium polyrhizum の化学的防御能と内生微生物の関与

*石橋宙佳(筑波大学院・生命環境), 山路恵子(筑波大学・生命環境系), 田村憲司(筑波大学・生命環境系), 烏云娜(大連民族大学), 宋彦涛(大連民族大学), 上條隆志(筑波大学・生命環境系), 川田清和(筑波大学・生命環境系), 胡暁星(筑波大学院・生命環境), 沖村沙耶佳(筑波大学院・生命環境), 春間俊克(筑波大学院・生命環境)

半乾燥地である中国内モンゴル自治区フルンボイル草原は、近年過放牧による砂漠化が問題となっている。また放牧の程度が強い場所において、Allium polyrhizum Turcz. ex Regelの群落内の優占順位が高いことが知られている。さらに、ストレス環境下では、内生菌が植物の生物的・非生物的ストレス耐性を高める役割をすることが知られているが、家畜による採食や踏みつけのストレス環境下でも内生微生物が植物の生存能力を高めているのではないかと考えた。以上より、本研究ではA. polyrhizumの化学的防御能と内生微生物の影響を評価することで、本植物が過放牧地で優占的に分布する要因に関する知見を得ることを目的とした。
現地に自生するA. polyrhizumは、放牧強度が強い地点において、化学的防御に関与するフェノール性化合物等をより高濃度に含有していた。さらに、根部からは内生菌Talaromyces pinophilusおよびFusarium oxysporumが高頻度に確認されたことから、これらの内生菌の本植物の乾燥および摂食ストレス耐性への関与を明らかにするため、乾燥ストレス条件下のA. polyrhizum実生への両菌種の接種試験を行った。その結果、内生菌接種区及び非接種区において、乾燥ストレス耐性の指標となるクロロフィル蛍光収率に差は確認されず、植物含水率は接種区で低下したため、両内生菌は植物体の乾燥ストレス耐性の増強には寄与していないと考えられた。また、総フェノール濃度の比較では、F. oxysporum接種区で高い傾向が確認された。
以上より、中国フルンボイル草原の過放牧地に自生するA. polyrhizumは、F. oxysporumの感染により化学的防御物質の産生が増加することで、家畜からの摂食ストレスに対する耐性を増強させている可能性が示唆された。


日本生態学会