| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-065  (Poster presentation)

植物プランクトンブルームの客観的識別手法における連続撮影画像の有効性

*中野善(水産機構・西海水研), 永井信(JAMSTEC)

閉鎖性内湾域では、夏季に急増した植物プランクトンが赤潮を形成し、天然魚や養殖魚の死滅などの漁業被害をもたらす。また、赤潮プランクトンが死滅・沈降後、好気的に分解されることで、貧酸素水塊が形成され、底生生物も死滅する。

有明海では赤潮の発生状況を把握するため、県試験研究機関により、船舶による採水と検鏡が定期的に行われている。今後、赤潮の発生機構の解明などの調査研究を進めるためには、より高頻度な観測が必要となるが、従来の定期調査の増強を図ることはコストや労力の面で困難である。そのため、低コストで高頻度の観測が可能な手法の開発が望まれている。そこで本研究では、カメラによる赤潮識別技術の開発を目標に、赤潮判別における海面連続撮影の有効性について検証する。

2016年夏季に、有明海奥部の自動観測ブイに小型コンピューター(Raspberry Pi)を組み込んだカメラシステムを設置した。同定点の定期調査結果から Chattonella spp. の赤潮発生日と非発生日を確認し、その日の画像から赤・緑・青の輝度を抽出した。このうち赤と緑(RG値)の二変量ヒストグラムから確率密度を求めた。これを教師データとし、非定期調査日(テストデータ)のRG値から赤潮発生と非発生の尤度を求め、ベイズ推定から赤潮の発生確率を算出した。

赤潮の発生確率と Chattonella spp. の細胞密度の変動が同調していたことから、教師データによる判別が妥当であることが確認された。また、テストデータの赤潮発生確率は、他機関によって報告された撮影定点周辺での本種による赤潮の発生状況とも矛盾していなかった。さらに、本種以外の赤潮発生日では、赤潮の発生確率は低い結果となった。以上のことから、本解析により、赤潮を構成種別に検出できる可能性が見出され、海面連続撮影の有効性が示唆された。

なお本研究では、水産庁委託「赤潮・貧酸素水塊対策推進事業」によって得られた観測結果の一部を使用した。


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