| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-066 (Poster presentation)
裸地化に伴う土壌流出は、土壌の化学特性を改変し、結果的に植物の成長を制限する可能性がある。この可能性を検証するために、土壌流出によって露出した下層土を用いて、土壌の栄養元素量とpHを変化させたときの草本植物の初期成長の反応を評価した 。
土壌は、小笠原諸島媒島において、野生化ヤギの撹乱によって起きた土壌流出地から下層土を採集した。この土壌は、貧栄養で強酸性であることが報告されている。土壌に対する施肥処理としてP2O5(3段階)とKNO3(2段階)、pH処理としてCaCO3(3段階)の添加を実施した。対象種は、媒島の草地植生で優占するイネ科3種(シマスズメノヒエ、スズメノコビエ、フタシベネズミノオ)とキク科3種(ホウキギク、シロバナセンダングサ、ウスベニニガナ)である。50 mLのプラスティックポットに土壌を40 g入れ、発芽した植物個体を1個体ずつ移植した。植物は、人工気象室で4週間栽培し、乾燥重量を測定した。
6種全てにおいて、P2O5を施肥しなかった処理において植物の重量が極端に小さかった。KNO3の添加による植物の重量の増加は、P2O5の添加があった場合にのみ検出された。このP2O5とKNO3の添加による重量の増加の程度は、CaCO3の添加量に依存した。シマスズメノヒエ、スズメノコビエ、ウスベニニガナの重量は、CaCO3を添加しなかった場合に増加した。一方で、フタシベネズミノオ、ホウキギク、シロバナセンダングサの重量は、CaCO3を添加した場合に増加した。
以上の結果は、1)土壌流出に伴う栄養塩、特に可給態リンの減少は植物の初期成長を強く制限する、2)この制限は土壌pHに依存する、3)この依存の程度・方向性は種によって異なることを示唆する。