| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-068 (Poster presentation)
生物多様性条約を背景として、国レベルでの効果的な生物多様性保全策が求められている。保全の対象となる生物群にとって、適切な空間スケールでの対策を導き出すためには、対象生物群の空間分布の偏り(地域性)を把握する必要がある。本研究では、全国的に整備された環境省の生物多様性情報の中から、特に種ごとの生態情報が充実しているチョウ類相を対象とし、日本における地域性区分をおこなうことを目的とした。チョウ類の分布情報として、環境省による第5回自然環境保全基礎調査の結果から1993-2000年に記録された情報を使用した。その際、迷蝶や偶産と思われる記録は除外し、土着と考えられる種の記録を使用した。また、ハビタット特性の違いを考慮するために、森林性と草地性の種を分けてデータセットを作成した。空間スケールは1次メッシュを使用し、メッシュごとのチョウ類相データを作成した。ArcGIS 10.2によるGrouping Analysisを用いて、隣接するメッシュ同士を結合するようにクラスタリングをおこなった。このとき、グループ数を3~15に指定して解析をおこない、それぞれのグループ数で求めた疑似F値によって当てはまりを評価した。解析の結果、当てはまりが良かった上位5個のグループ数は、森林性のチョウ類は3~7グループ、草地性のチョウ類は4~8グループであった。森林性チョウ類のクラスタリング結果は、緯度に従ってチョウ類相が変化するという傾向がみられた。一方で、草地性のチョウ類では、中部地方や中国地方に特徴的なグループが見られ、緯度以外の要因が影響を与えている可能性が示唆された。このように同じ分類群であっても、ハビタット特性に応じて地域性が異なることから、それぞれのハビタット特性ごとに個体数の減少要因や求められる保全策が異なってくるものと考えられた。