| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-070 (Poster presentation)
【はじめに】著者らは、塩化アルミニウム(AlCl3)を土壌表面に散布することによって土壌を酸性化・貧栄養化させ、これによって外来植物の生育を制御する研究に取り組んでおり、場所によっては高い効果が得られることを報告している。本研究では、外来植物の蔓延が問題となっている千曲川河川敷において、AlCl3処理による外来植物の生育制御効果について報告する。
【方法】2014年5月、千曲川河川敷3ヶ所(MYB、KRB、CKB)において、それぞれ5m×5mのAlCl3処理区および無処理区を設置し、各区内に1m×1mの方形区を4区設け、植生の変化をモニターした(MYBおよびKRB:2年間、CKB:3年間)。なお、土壌表面から深さ10cmまでの置換酸度を12 me kg-1とするために必要なAlCl3処理量を予め実験により求め、これを処理量とした。
【結果】アレチウリが蔓延するMYBおよびKRBでは、AlCl3処理によってアレチウリの生育が顕著に抑えられ、代わりにクサヨシなどの在来種が優占する植生となった。また、その効果は2年間継続した。一方、セイタカアワダチソウが蔓延するCKBでは、AlCl3処理によってセイタカアワダチソウの被度や草丈はやや抑制される傾向が3年間観察されたものの、顕著な抑制効果ではなかった。多年生植物であるセイタカアワダチソウは地下部に栄養を蓄積するため、土壌を貧栄養に変えても生育が抑制できないケースがあるものと考えられた。これに対して一年生植物であるアレチウリは、その生育に必要な栄養を発芽後に根から吸収する必要があるため、土壌を貧栄養化することによる抑制効果はより顕著であったと考えられた。なお、AlCl3処理によって土壌が酸性化され置換酸度が高まっていること、この状態は少なくとも処理1年半後まで維持されていることを確認した。また、土壌中の酸の動きは緩慢であり、横方向への拡散はほとんど認められなかったが、場所によっては20cmの深さを越える縦方向への移動が認められた。