| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-074  (Poster presentation)

天然林と人工林の小流域におけるトビケラ群集の特徴

*速水将人(道総研・林業試験場), 長坂有(道総研・林業試験場), 長坂晶子(道総研・林業試験場), 伊藤富子(北海道水生生物研究所)

北海道の主要造林樹種であるトドマツの人工林は、その面積の大部分が主伐期を迎えており、木材生産や公益的機能だけでなく、生物多様性に配慮した森林管理が求められている。本研究では、北海道中央部のトドマツ人工林を主体とした森林のトビケラ群集の特徴を把握するため、2013年6-10月に天然林小流域1か所(流域面積4.5ha)と約50年前に造林されたトドマツ人工林の小流域4ヶ所(流域面積6‐12ha)の河道上にマレーズトラップを設置して約2週間ごとに成虫を回収し、各流域の個体数・種数・季節消長・優占種を調査した。また、各流域の群集の種多様性を評価するため、流域ごとにシンプソン多様度指数(D)を算出した。さらに、小流域間の群集の類似度を明らかにするため、NMDSによる群集構造解析を行った。
その結果、各流域の個体数・種数は、天然林で1456個体・35種に対して、人工林は1215‐2789個体・27‐36種であった。出現種数は、どの流域も7月上旬〜8月上旬にかけて最も多くなった。1日あたりの羽化個体数は、天然林と人工林2か所では明瞭なピークが認められなかったが、その他の人工林2流域では、6月上旬と7月下旬〜8月上旬の2度ピークが認められた。全体の最優占種は、フトヒゲカクツツトビケラ(総個体数の24%)であったが、人工林2流域ではミミタニガワトビケラが優占した。各流域の群集の種多様度は、天然林(D =0.79)が、人工林(D =0.76‐0.88)の中間的な値を示した。群集構造解析の結果、異なる3つのグループが検出されたが、天然林と人工林流域の群集は明瞭に区別されず、むしろ人工林流域ごとに異なるグループが形成された。従って北海道中央部の小流域に見られるトビケラ群集の特徴の違いは、単純に天然林・人工林と対応するわけではなく、小流域間の環境の違いや、森林施業の履歴(除伐・間伐回数など)の違いを反映している可能性がある。


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