| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-078 (Poster presentation)
アメリカ合衆国カリフォルニア州北部,ハンボルト郡一帯には長い海岸砂丘がひろがっている。ここでは広く,海岸砂防のためにヨーロッパ原産のビーチグラス(オオハマガヤ属)が導入されて定着し,海浜に広く繁茂している。ビーチグラスは砂移動の多い海岸の砂地に適応した植物で,茎を密生させて一面に繁茂し,周囲に砂を堆積させて砂丘前面の地形を変化させる。ハンボルト郡一帯の砂丘では本来,日本に分布するのと同じハマニンニクやハハヒルガオが自生するが,密生したビーチグラス群落はこれら在来植物と競合し,海浜植物群落の種多様性を低下させているとの報告がある。このため,本来の海浜植物群落を保全する目的で,市民参加によるビーチグラスの大規模な駆除作業が行われている。ハンボルト郡一帯の海浜砂丘には,一部に立ち入りに事前許可が必要な保護地が設定されており,解放されている場所の中でも,海岸にアクセスできるトレイルが決まっていて,人の踏みつけによる砂丘のかく乱をコントロールしている場所がある。一方で,OHVの走行が許されるレクリエーションエリアも存在する。当地の駆除作業が行われていない場所と,行われている場所,トレイルによる制限地,保護地内において植生調査を行い,植生管理とその効果を検証した。レクリエーションエリアでは,外来植物の繁茂が著しかった。ビーチグラスが繁茂している場所(駆除作業なし)では,在来植物の種多様性は著しく低かった。駆除実施地の種多様性は,トレイルによる制限地や保護地内のそれに近かった。人為かく乱のコントロールは海浜植生の維持に大きな影響があるといえる。砂丘を訪れる人数の違いは大きいが,トレイルによる制限や立入禁止地を設定する管理方法は,消滅や状況悪化の続く日本の海浜砂丘でも一考の余地がある。