| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-086  (Poster presentation)

浸水災害ハザードと生物多様性の関係:福井県三方五湖流域における検証

内田圭, 篠原直登, *吉田丈人(東京大学総合文化研究科)

自然災害リスクの増加には、人口の空間分布の変化ならびに気候変動による異常気象の頻発が深く関与している。その中でも、河川の氾濫原や沿岸域といった自然災害の被害を受けやすい空間における人間活動の活発化が、リスクを高める主な原因と指摘されている。潜在的なリスクの軽減に資する方策として、「生態系の適切な管理」が2005 年1月の国連防災世界会議で挙げられ、生態系を基盤とした災害リスクの低減が世界的に注目されるようになった。しかし、生態系が持つ減災機能をどのように評価し、どのように活用するかは、未だ十分に検討されていない。

本研究は、「浸水災害ハザードと生物多様性に関係があるのか」という問いを立て、福井県三方五湖流域をモデル地域として研究した。現在の災害ハザードと土地利用さらには生物多様性の関係を整理することは、生態系の適切な管理やその価値を検討するための重要な基礎情報となる。

三方五湖ハス川流域を500mメッシュに区切り、メッシュごとに、生物多様性、土地利用面積、浸水災害ハザード面積を算出し、それらの関係を解析した。浸水ハザード面積が広いメッシュほど、陸上植物の種多様性は低く、一方で絶滅危惧種に指定されているダルマガエルの個体数は多かった。さらに、都市的土地利用を農地へ変換するシナリオ分析を実施することで、災害リスクの低減(便益)と生物多様性(自然資本)の関係を評価した。本結果は、減災を目的とした基盤整備に対して、生物多様性を組み込みこんだ政策・意思決定のための非常に重要な基礎情報となるであろう。

本研究は、環境省の環境研究総合推進費4-1505により実施された。


日本生態学会