| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-090  (Poster presentation)

谷戸環境における湿地帯の地下水位変動と植生との関係について

*竹内大悟, 東出大志(早稲田大学自然環境調査室)

谷戸環境における水田由来の湿地生態系は、周辺環境と比較し遷移速度が速く、より脆弱な生態系と言える。保全や植生回復のための管理方法としては、復田を伴う人為的な土壌撹乱の手法が報告されているが、それにかかる労力は決して小さくない。広範囲な湿地生態系の回復には、より簡易的な手法でも湿地植生を回復できる環境である、と判断できる基準を明確にしていく必要がある。本研究では、植生回復の要因として水位変動に着目し、植生との関係を明らかにした。また管理手法の1つとして草刈り作業が、水位変動へ与える影響についても検討し、水位変動と植生および管理手法についてそれぞれの関連性を検証した。調査は2015年から2016年にかけて早稲田大学所沢キャンパス内の放棄水田由来の湿地帯(3ha)で行った。水源はすべて降雨による直接流入と湧水である。ライントランセクト法による植生調査を行い、2mおきの調査区内(1m×1m)に出現したすべての植物種を記録した。また植生調査と同じ調査ライン上に設置した静電容量式水位計により、地表下30cmまでの水位変動を1時間毎に記録した。結果として、最大および最低水位と地上植生との間に関係性は見られなかった。水位の安定性および季節性と地上植生との間には関連性が見られた。また安定的な水位を維持できる環境では、希少化した水稲随伴種が多く見られる一方、外来種の出現も多く見られた。草刈りによる水位変動への影響については、極短時間による影響が見られたものの、全体の植生に影響すると考えられる変動量ではなかった。放棄水田由来の湿地生態系の回復には、水位変動の安定性が重要であると考えられる一方、外来種のリスクを高め、管理上留意する必要があると考えられた。また、こういった環境を選択的に管理することで労力の効率化にも寄与できると考えられた。


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