| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-093  (Poster presentation)

自然を活用した社会づくり:グリーンインフラによる防災・生物多様性・健康・地域活性化の取組み

*上野裕介(東邦大学), 大澤剛士(農研機構), 西田貴明(三菱UFJ), 西廣淳(東邦大学)

グリーンインフラ(Green Infrastructure)は、自然の持つ多様な機能や仕組みを活かした社会資本整備や防災減災、国土管理の概念である。さらに国の国土形成計画や社会資本整備重点計画にも明記され、今後のインフラ整備に活かされることが期待されている。
グリーンインフラの最大の特徴は、その多機能性である。例えば都市緑地は、新鮮な大気の供給や水源涵養の機能、人々のレジャーや憩いの場、災害時の避難場所や救助の拠点、生物の生息場や生産緑地としての機能など、市民生活を豊かにする様々な機能を併せ持つ。これらの機能は、人間の工夫や技術によって、様々に引き出すことができ、その工夫の余地が大きいほど、より優れたグリーンインフラであると言える。
静岡市にある麻機遊水地は、1974年7月に発生した七夕豪雨を契機に、市内を流れる巴川に整備された約100 haの遊水地である。遊水地は、大雨時には治水施設として機能する一方、平常時にはオープンスペースとして多面的に活用でき、優れたグリーンインフラとしての可能性を秘めている。さらに麻機遊水地は、静岡市の市街地に近く、遊水地に隣接して障害者が通う特別支援学校や複数の病院もある。このような立地条件のもと、障害者の自立支援を軸に、地域住民と病院、民間企業、行政、大学などの連携によって様々な湿地環境を活かしたイベント(農作業体験、おさんぽ会、池つくり、柴揚げ漁、ヨシ原の火入れ、葦船作りなど)が行われている。
本発表では、まず、グリーンインフラを活用した「自律的かつ持続的に人の暮らしと自然環境が守られる仕組み作り」に向け、病院や特別支援学校、市民らと取り組んでいる麻機遊水地での活動を紹介する。次に、人々の意識や健康の面から遊水地の自然環境を評価した結果を紹介する。最後に、グリーンインフラの導入を進めていく上での課題を示し、議論する予定である。


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