| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-095  (Poster presentation)

市民参加型モニタリングを用いた利根運河堤防部の順応的管理手法の検討

*相澤章仁(千葉大・院・園芸学), 田中愛子(千葉大・園芸), 辻野昌広(日本生態系協会)

利根運河は1980年に通水した利根川と江戸川を結ぶ流路延長8.5㎞の一級河川である。その堤防部にはワレモコウやツリガネニンジンなどを中心とした在来の草原性植物群落が多くの場所で形成されている。草原性植物群落は全国的な減少傾向にあるが、利根運河の堤防は客土をせず掘削した土で造成され、また堤防点検など維持管理のための草刈りが継続的に行われてきたことで、これらの植物に好適な環境を維持してきた。しかし、草刈りの回数や時期の決定においては植生管理の視点は含まれていないため、今後の管理方針などを考慮する際には保全生態学的視点を取り入れ、管理とモニタリングを連動させた順応的管理を行うことが求められる。そこで本発表では、2013年より市民団体“利根運河の生態系を守る会”によって行われてきた市民参加型モニタリングを紹介し、その結果を用いた利根運河堤防部の順応的管理手法についての提案を行う。市民モニタリングは3KP付近から5KP付近までの約2km区間の両岸を対象に、毎年春と秋の2回行った。堤防部にある遊歩道沿いを歩き、50mごとに1m×1mのコドラートを5つ投げ、あらかじめ決めておいた対象種の在/不在をコドラートごとに記録するという単純な方法を用いた。これまでの結果から、多くの在来種はその分布について大きな増減は見られなかったが、一部の外来種では分布拡大が確認された。特にセイヨウアブラナについては、2014年度には6地点でしか確認されなかったものが、2016年度には42地点に広がり、急速に分布を広げていることがわかった。現在は、モニタリングを継続しながら、草刈り時期の変更や外来種の選択的除草などの実験的試行を河川管理者と協働で行うことを検討している。本事例は、市民参加型のモニタリング成果を管理計画にフィードバックする、保全と管理を両立させた模範的な順応的管理のモデルケースとなるだろう。


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