| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-292  (Poster presentation)

巻きひげには味覚がある -つる植物における接触化学識別の発見ー

*深野祐也(東大・農)

巻きひげは、ウリ科・ブドウ科・マメ科などのつる植物で独立に進化した、ホスト植物に巻き付くための独特な器官である。巻きひげは、接触刺激に対して素早く反応するため、植物における運動や接触応答のモデルとして、ダーウィン以来長い間研究されてきた。しかしながら、巻きひげが、化学認識を使って巻き付く相手を選択している可能性はこれまで検証されてこなかった。
本研究では、ブドウ科のつる植物ヤブガラシの巻きひげが、化学認識をもっており、巻き付き相手として不適当なホストを識別し忌避する能力を持っていることを報告する。さらに、いくつかの化学分析とバイオアッセイによって、ヤブガラシの化学認識に関与する物質が特定された。その物質は非揮発性の物質であるため、ヤブガラシの巻きひげは、接触による化学認識、すなわち動物における「味覚」と似たような識別機構を持っていることを意味する。また、同じ実験をウリ科のつる植物であるキュウリとゴーヤの巻きひげを用いて行ったところ、両種とも、ヤブガラシと同じように、化学識別を使って適切に不適当なホスト植物への巻き付きを忌避していることが確認された。これらの結果は、巻きひげにおける接触化学識別能力は、異なるつる植物の系統で独立に獲得されたものであり、それゆえ巻きひげ型のつる植物において非常に重要な役割を果たしていることを示唆している。巻きひげは、巻き付くための機能だけでなく、周囲の植物をセンシングする化学センサーの役割も果たしていると言える。


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