| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-J-297 (Poster presentation)
島嶼生態系ではしばしばオオコウモリ類がキーストーン種として植物の送粉や種子散布を担い、多くの植物と共生関係を築いている。これまでの研究によって、琉球列島のクビワオオコウモリPteropus dasymallusにおいては、ある種(イルカンダMucuna macrocarpa)の唯一の送粉者であることや、大型の種子を持つ植物の数少ない種子散布者であることなどがわかってきた。一方で、本種はフィリピン北部から鹿児島県の口永良部島にわたる南北1700 kmにも及ぶ長大な範囲に分布している。この中には、オオコウモリが生息しない島、低密度の島、高密度の島、数年前から生息しはじめた島、40年ほど前から生息しはじめた島、近年絶滅してしまった島など、動物側の生息状況に飛び石状の分布構造が見られる。したがって、共生関係にある植物種においても、これらの島間で分布の有無、もしくは生育密度に何らかの差が生じていることが期待される。本研究では、共生関係にある動物と植物の密度の対応関係から、動物と植物の関係性が互いの密度によってどのように変化するのか、またオオコウモリの個体数がどのくらい減少した時に機能的絶滅が起こるのかを明らかにしたい。本発表では、2014年から2017年に琉球列島の島々(54島)で、夜間のルートセンサスと食痕調査によってオオコウモリの密度推定を行い、また植物に関しては、各島の植物相を記した文献の調査と各島でのラインセンサスにより餌植物の生育密度の推定を行った結果をもとに、動物と植物の関係性が島ごとにどう変化するのかを考えてみたい。