| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-J-310 (Poster presentation)
専門家サポートの得にくい漁業者や市民グループ等にとって、干潟ベントス調査において多様度を求めるときの難点の一つが、種同定の不確実さである。特に希少種の同定に労力を要し、複数の希少種に属する個体が同定されずに不明種として類別される場合がある。そのとき不明種の存在が最終的な多様度指数にどのような誤差を生むのか、見積もりがあると便利である。
そこで、全国各地の干潟域で得られたマクロベントスの調査データを用いて、総個体数のうち0-10%にあたる個体を不明個体とし、不明種として一括して指数の計算に含めた場合と除外して計算に含めなかった場合の多様度指数を求めた。このとき不明個体が希少種になるように、出現個体数の少ない種に属する個体から順に不明種になると想定した。求めた指数は0D(=S種数)、1D(=expHシャノン)、2D(=1/Dシンプソン)およびinfD(=1/p1最優占種占有率の逆数)の4つで、本来の値とどの程度の変動があるかを見積もった。また対照としてサンプル中の個体を無作為に不明種とした場合に同様の見積もりを行った。
0-10%の個体数にあたる希少種を不明種として一括した場合、infDはほとんど変化しないが他の指数の値は低下した。その程度は0Dで最も大きく、次いで1D、2Dの順であった。不明種を除外した場合は値がさらに低下した。標本中の個体を無作為に不明種とした場合は、infDが他と比較してかなり大きめの値となり、他の指数ではわずかに増加した。除外した場合は1Dと2Dはごくわずかに減少した。従来より1Dと2Dが多様度指数としてよく用いられるのはこの性質による。不明種が希少種に偏っていると考えられる場合は優占種に計算のウェイトをかける2Dを用い、不明種というカテゴリーを設けて計算に含める方がより安定しているといえた。