| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-321  (Poster presentation)

全国ボランティア調査で見る里地の生き物の多様性 - モニタリングサイト1000里地調査の成果

*竹中明夫(国立環境研究所), 石井実(大阪府立大学), 植田睦之(バードリサーチ), 尾崎煙雄(千葉県立中央博物館), 高川晋一(日本自然保護協会)

モニタリングサイト1000は環境省による長期生態系モニタリング事業である。2003年に検討を開始し、準備が整った生態系から順次モニタリングが実施されている。対象となる生態系は高山帯から沿岸・浅海域まで多様である。調査サイトは全国の約1000ヶ所に及ぶ。
里地生態系では全国の約200ヶ所に調査サイトがあり、ボランティアの市民調査員が主体となってモニタリングが行われている。調査内容は植物、チョウ、鳥、カエル、ホタル、カヤネズミ、水質などであり、1つのサイトで多くの項目を調査しているサイトもあれば、ひとつ、ふたつの項目のみを調査しているサイトもある。また、個々のサイトの調査継続年数はさまざまである。
ボランティアによる調査であることを考えて調査者の負担が過大にならないようにデザインされた調査であることから、得られたデータを解析するにあたってはさまざまな課題がある。それでも、広範囲・多地点・高頻度の調査データは、里地の生き物を理解する上での貴重な情報を含んでいるはずである。それらを抽出するには、里地・里山の生態系および対象となる生物群、統計解析手法などの知識などを持った専門家の協力が必要だが、現在のところそうした協力体制は十分には整っていない。
演者らは、里地調査検討委員および事務局として、可能な範囲でデータの解析を行ってきた。本講演では、多種のデータが集積している植物、チョウ、鳥の観察データの解析結果の一部を紹介する。いずれの分類群についても、里地・里山に広く見られる種、種多様性が高いサイトでのみ見られる種を抽出することができた。こうした情報は、市民調査員が担当サイトの生物相の意味を考える手がかりとなる。本モニタリング事業を保全にフィードバックしていくためにも、今後さらに蓄積していくデータの解析体制の構築が期待される。


日本生態学会