| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-N-388 (Poster presentation)
背景と目的:土壌CO2フラックス(SCF)に対する主要な環境影響要因として、地温と土壌含水率がある。しかし、これらの影響は相互作用しており、片方の影響のみを自然条件下で検出することは難しい。切土法面では、しばしば地下水が出ている場所がみられる。そのような場所では、自然環境下で近傍の2地点で土壌含水率のみが異なる地点を設定でき、SCFに対する土壌含水率のみの影響を抽出できる可能性がある。そこで、本研究ではそのような場所でSCFを測定し、土壌含水率の影響を調べた。
方法:森林総合研究所北海道支所の敷地内にある切土法面において、地下水が滲出している場所5カ所にプロットを設定した。それぞれのプロットにおいて、滲出地下水によって湿っている場所(湿潤区)とそこから斜め上に約2m離れた場所(対照区)にチャンバーを埋設した。地下水は、融雪期に地表水が見られることがあるものの、他の期間では地表水はほとんど見られなかった。植生は、外来イネ科草本を主とした草地で,その他にブタクサ、セイヨウタンポポ等、各種外来草本が混じっていた。そこで、2013~2015年の無雪期に不定期に、ヴァイサラ社のCO2センサーGMD20により密閉法で12回SCFを測定した。地温は温度センサーで、土壌含水率はTDRで測定した。
結果と考察:土壌含水率は、どのプロットでも湿潤区の方が高かった。特に、3カ所のプロットでは常時飽水状態だった。SCFは、測定年の異なるデータを合わせても夏期に高くなる一山型の季節変化を示した。どのプロットでも湿潤区で小さかった。SCF比(対照区と湿潤区のSCFの差を対照区の値で割った比)はTDR比(対照区と湿潤区のTDR値の差を対照区の値で割った比)と特定の関係が見られなかった。つまり、土壌含水率の異なる近傍2地点でのSCFの差は、土壌含水率にどれだけ差があるかという指標では説明できなかった。