| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-N-392 (Poster presentation)
森林生態系において、土壌からのCO2放出量(土壌呼吸量)は生態系呼吸量の多くを占めており、生態系の炭素収支を大きく特徴づけている。土壌呼吸量は空間的なばらつきを示す場合が多く、対象とする生態系の土壌呼吸量について信頼性の高い代表値を得るには、空間変動を踏まえた評価が必要になる。しかし、亜熱帯林では土壌呼吸量の空間変動に関する知見は未だ非常に限られている。そこで、本研究では沖縄島北部の亜熱帯常緑広葉樹林において、土壌呼吸量の空間変動の特徴とその要因、代表値を得るために必要な測定サンプル数について検討した。
本研究では0.15haの調査区内に5m間隔の格子状に測定点(計50地点)を設け、2013年10月から2014年12月にかけて、ほぼ隔月ごとに全地点の土壌呼吸量を測定した。その結果、2014年の地点ごとの年平均土壌呼吸量は2~13 μmol/m2/s(全地点平均値: 5.5 μmol/m2/s)となり、比較的大きな空間変動がみられた。土壌呼吸量が高くなる夏季には地点間の土壌呼吸量の変動幅も拡大した。また、モンテカルロ法に基づく解析により、同調査区において変動係数10%以内で土壌呼吸量の代表値(年平均値)を得るには、16地点以上での測定が必要であることが分かった。調査区内において、土壌のリター被覆率が高い場所では大小様々な値の土壌呼吸量がみられたのに対して、リターの少ない場所では低い土壌呼吸量しかみられなかった。しかし、リター自体の分解呼吸量は非常に少なく、土壌呼吸量にはほとんど寄与していなかった。このことから、リターは無機物・有機物の供給源として土壌中の細根や微生物を増加させる一因になっている可能性があり、これらの呼吸量が土壌呼吸量の空間変動を特徴づけていると考えられた。