| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-N-398 (Poster presentation)
陸上生態系の未来予測のためには、気候変動が生み出すであろう陸上植物にとっての異常事態(高温、乾燥、過湿、栄養過多・欠乏によるストレス)を精緻に表現でき、かつ、植生群落から全球スケール、数年から数百年スケールまでの計算が可能な陸上生態系動態モデルが必要となる。このモデルには、植物個体の生き方(例えば、個体毎の光合成、呼吸、水分・栄養の利用、繁殖、成長、そして死亡)から植物集団の振る舞い(例えば、光・水分・栄養の奪い合い)までを表現することができる能力が求められる。そこで、新たにS-TEDy(SEIB-DGVM-originated Terrestrial Ecosystem Dynamics)モデルを開発した。S-TEDy には次のような特徴がある:それは、(1)大気中高CO2濃度に対応した気孔開閉・光合成反応植物生理学モデル、(2)土壌物理学に則った土壌水分・熱動態モデル、(3)植物体内中の水分・炭水化物動態モデル、(4)植物体内を含めた生態系内窒素循環・収支モデルモデル、の実装である。モデル(2)により、北方地域の凍土溶解過程のシミュレーション、また、モデル(3)の実現を可能にした。モデル(3)により、植物枯死の現象、また、土壌乾燥・過湿の光合成への影響や植物の土壌栄養吸収を理論的に記述することができた。モデル(4)は、地域による土壌栄養の性質の違いと、大気中高CO2濃度が土壌栄養循環に及ぼす影響とが、生物生産力を決めていく過程を記述することに成功した。