| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-N-402  (Poster presentation)

沿岸浅海域のブルーカーボン推定-大気から海底貯留までのプロセス評価-

*堀正和(水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所), 桑江朝比呂(港湾空港技術研究所)

ブルーカーボンとは、海洋生物の作用によって海中に取り込まれた炭素のことを示す。2009年、国連環境計画が中心となり公表された「Blue carbon」レポートでは、地球上の生物が吸収する二酸化炭素(以下、CO2)のうち、実は陸上ではその半分弱しか吸収されておらず、残り半分強は海洋が吸収していること、さらに海洋で貯留される炭素の半分以上はごく浅い沿岸浅海域の生態系が吸収していることが提唱された。
沿岸の海洋植物によるCO2吸収においては、海洋植物がCO2を吸収する前に大気から海中にCO2が溶け込むプロセスを挟むこと、海水流動による輸送と堆積作用が卓越することなど、陸上植物によるCO2吸収と異なる点があるため、グリーカーボンオフセットのような定量的評価法はまだ確立されていない。沿岸の海洋植生によるCO2貯留量を評価し、地球環境変動対策へのアプローチに加えていくためには、沿岸海洋における(1)大気から海中、(2)海中から植物、(3)植物から海底貯留、といった一連のCO2貯留プロセスを評価する必要がある。本研究では、日本周辺海域を対象に実施した(1):大気から海洋へのCO2が吸収するプロセスとそのプロセスに関与する海洋植生の効果について、次に(2):海洋植生による炭素隔離量評価、また(3)-1:海中林の堆積物中に長期間貯留される炭素量の評価、および(3)-2:海洋植生由来の炭素が沿岸浅海域から深海へ輸送されるまでの過程に関する研究結果を紹介する。
また考察では社会科学的側面を加え、河口域や沿岸浅海域を対象とした気候変動の緩和と人間活動との関わりに関するアイデアや、行政機関によるブルーカーボンを用いた事業実施例、最新の国際社会・政策情勢に基づく今後の気候変動対策に向けた展開について紹介する。


日本生態学会