| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-N-409 (Poster presentation)
沿岸域に分布するマングローブ林は、森林生態系の中で最も炭素貯留量が大きく (Donato et al. 2011)、特異的に高いCO2吸収能を持つ(Rivera-Monroy et al. 2013)。高いCO2吸収能は、熱帯環境での高い純一次生産量と、冠水による低い分解呼吸量により説明されているが、炭素収支の見積もりにおいて未解明な部分が多く、CO2吸収の報告には大きな誤差がある。本研究では、従来の方法では定量されてこなかったマングローブ林からの水系を通じた炭素流出に着目し、土壌中の地下水に形成される溶存無機炭素(DIC)プールと潮汐作用に伴うDICの流出について、炭素同位体を用いた解析を実施した。
生態学的な調査が実施されている沖縄県石垣島吹通川のマングローブ林の河口域において、2017年8月に1時間毎に河川水を採取し、pH、塩分、DIC濃度および炭素同位体比を測定した。これらは、潮位変動に伴った変化を示し、特に、干潮時に高いDIC濃度が示された。その濃度は、上流の河川水や付近の海水を上回っており、マングローブ林からのDIC供給が示唆されるものであった。このとき、DICの炭素同位体比の変動は、0.37~-10.33‰であり、海水起源のDICよりも明らかに低い値であった。このことは、マングローブ林地下における有機物分解に由来する炭素同位体比の低いDICを含んだ地下水が、マングローブ林から河川へ流出したことを示している。
マングローブ林からの炭素流出の影響を定量するために、塩分と炭素同位体を指標とした混合を仮定して、分析結果を解析した。塩分を指標とした計算では、河川水と海水の混合状態を再現できる。そのとき、DIC濃度と炭素同位体比を計算値として求め、計算値と実測値とのずれを利用してマングローブ林からの炭素成分の寄与を計算した。本発表では、この解析結果を報告する。