| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-O-419  (Poster presentation)

特異な分布を示す海浜性の絶滅危惧植物バシクルモンにおける地理的遺伝構造

*大谷雅人(兵庫県大・自然研), 満行知花(東北大院・農), 池田明彦(品川区役所), 指村奈穂子(山梨県森林研), 陶山佳久(東北大院・農)

バシクルモン(Apocynum venetum L. var. bashikurumon (H.Hara) H.Hara)はキョウチクトウ科の多年草であり,大陸に広く分布するラフマ(羅布麻; A. venetum)の日本固有変種に相当する.これまで北海道,青森県,新潟県の海岸崖地の限られた地域にのみ生育が確認されており,その分布域の狭さから,環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類,新潟県のレッドリストでは絶滅危惧Ⅰ類に指定されている.本研究では,次世代シーケンサを用いたゲノムワイドな遺伝解析により,本種がこのような特異な分布パターンをとるに至った歴史的背景を明らかにすることを目的とする.
バシクルモンの全ての既知の自生地(新潟県1地点,青森県1地点,北海道8地点)を訪れ,遺伝解析用の葉試料の採取を行った.また,外群として,大陸の4地点で採取されたラフマのさく葉標本および産地不明のラフマ種子由来の実生も分析対象に加えた.MIG-seq法により単塩基多型の探索を行い,最終的に207サンプルについて83 遺伝子座の遺伝子型を決定した.その結果,奥尻島など少数の例外を除き,国内の自生地のほとんどはそれぞれ単一クローンか,ごく近縁な少数のクローンで構成されている可能性が示唆された.国内ではバシクルモンの結実が観察されることは稀であるが,地下茎によるクローン成長は多くの自生地において旺盛である.遺伝分析の結果は,自生地におけるこうした繁殖の現状を支持するものである.一方,国内・国外の各地域集団は互いに明確な遺伝的分化を示しており,クローン数は少ないものの,一定の地域性は保持されていると考えられた.今後は分析の解像度を上げ,クローン識別や遺伝構造度解析の精度向上を図っていく予定である.


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