| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-O-426  (Poster presentation)

温帯性木本ツルの分布とハビタット特性

*西尾孝佳, 根本利起哉(宇都宮大学・雑草と里山の科学教育研究センター)

はじめに:北米,欧州,豪州などでは,アジア原産の温帯性木本ツルの一部が著しく侵略的な挙動を示すことが知られている。侵入先でこれら木本ツルが繁茂する要因については様々な研究が行われてきたが,いまだ原産地域における生態的特性についての情報は少ない。そこで本研究では,同所的に出現する複数の木本ツルについて,出現パターンとそれを制御する要因について検証を行った。
材料及び方法:栃木県那須烏山市大木須の里山景観に拡がる落葉広葉樹二次林と耕作放棄水田の隣接部に調査プロットを複数設置した。調査プロットにおける人為攪乱の時期,程度については土地を管理する住民に聞き取りを行った。調査プロットでは,出現する木本ツルのほか,草本ツル,木本,草本に分類して種のリストアップと被度の計測を行った。立地環境としては,光合成有効放射量(PAR),赤色光/遠赤色光比,地形(斜面方位,傾斜)の計測を行った。解析ではこれらの要因と各木本ツル出現の関係,木本ツル出現の相互関係を検定した。
結果及び考察:調査対象とした立地には,クズ,アケビ,フジ,ノブドウ,アオツヅラフジ,ミツバアケビなどの木本ツルが出現した。このうち,クズは被度も出現頻度も最も高く,ついでフジ,ノブドウ,アケビとなった。光に対しては,クズが,フジ,ミツバアケビに比べて,有意に相対PAR,R/FRが高い立地に出現し,またミツバアケビはアケビに比べて有意に相対PAR,R/FRが低い立地に出現する傾向があった。一方,人為攪乱の程度,地形はこれらの木本ツルの出現と有意な関係は確認できなかった。木本ツル出現の相互関係ではクズとフジ,クズとミツバアケビの出現に負の相関がみられた。以上より,解析した木本ツルの分布には,光環境の差異が関係することが示唆された。


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