| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S04-6  (Lecture in Symposium)

熱帯泥炭地域における災害とリスク管理

*甲山治(京都大学東南アジア研究所)

インドネシアに広がる熱帯泥炭地では、湛水状態の湿地林が維持され、全球の土壌炭素の約20%にも及ぶ植物遺体の蓄積が推定される。しかし、1990年代以降、大規模な排水によりアカシアやアブラヤシなどが植栽され、プランテーション開発が急速に進行し、さらにこれに伴って移民が泥炭地域内に流入し、まさに開発が進んでいる。排水により、泥炭地から二酸化炭素が排出し沈下するが、同時に乾燥した泥炭地は極めて燃えやすく、毎年乾季における泥炭火災を頻発しており、開発の拡大により大規模な火災と煙害は加速的に深刻化している。特に2015年の7月~11月にかけて、非常に広範囲かつ高頻度の泥炭火災が生じ、インドネシアの210万ヘクタール(約北海道4分の1)の面積で火災が生じ、50万人が上気道感染症と診断され、近隣国でも大きな問題になった。
そこで泥炭地火災の発生するインドネシアの2カ所において,温室効果ガスおよび粒子状物質の測定を行っている.泥炭火災由来の大気汚染物質のうち,開発した超小型パーティクルカウンターを用いて,現場での測定が殆どない熱帯泥炭燃焼由来の粒子状物質(PM2.5)を計測している.また該当市環境局モニタリングステーションデータ(PM10, CO, NOx, SOx)を用いて,長期の大気汚染を解析した.観測期間に同期して,調査では,現地の小学校と協力して日々の呼吸器症状とピークフロー値の記録を行い,ヘイズの曝露と自覚症状・肺機能の経時的変化との関連を検討する.ピークフローは,十分息を吸い込んだ状態で,極力息を早く出したときの息の速さであり,気管支の状況を把握するため,喘息の状況把握に用いられる.また,同地域における過去の医療機関への入院および外来受診データとヘイズ発生状況データを結合し,ヘイズ曝露 と入院および受診との関連について検討し,ヘイズ発生による入院・受診の増加率推定を行っている.


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