| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S08-4  (Lecture in Symposium)

マングース根絶のための化学的防除の技術開発

*山田文雄(森林総合研究所), 城ヶ原貴通(宮崎大学), 中田勝士(環境省やんばる野生生物保護センター), Sugihara, Robert(USDA/APHIS), 橋本琢磨(自然環境研究センター)

特定外来生物のフイリマングースHerpestes auropunctatusの防除事業は,鹿児島県の奄美大島と沖縄県の沖縄島北部地域(やんばる)において2005年から本格的に開始されている.集約的な罠捕獲作業や探索犬の使用によって,特に奄美大島においては,地域的根絶箇所も増え,全島的根絶も寸前の状態となり,在来種回復も達成されている.一方,本種の生息数減少に伴い,従来の罠方式による捕獲効率は低下し,根絶達成予測期間は10年以上必要と推定される.今後,効率的に短期間に根絶を達成するためには,化学的防除手法の導入が求められる.そこで本研究では,化学的防除技術の確立のために,飼育下と半野外環境下において,薬剤の選択,致死効果,薬剤残留と在来種影響予測などの試験を行った.薬剤として,鶏肉ミンチソーセージベイト(1個50g)を基材とした抗凝結性剤のPAPP(パラアミノプロピオフェノン,カプセル化0.15%),亜硝酸ナトリウム(カプセル化1%)およびダイファシノン(50ppm)を個別飼育ケージで試験した結果,半数致死(LD50)の致死時間はPAPP(1時間以内)と亜硝酸ナトリウム(2時間以内)で短く,ダイファシノン(6-7日)で長いことが明らかになった.このうち,野外環境下での候補薬剤としては,市販の殺鼠剤(ヤソジオン)として使用されるダイファシノンが適当と考え,半野外環境下(75m2)において,複数個体の生息条件下で致死効果を検討し,個別ケージ同様に効果の高いことを明らかにした.今後,野外試験地として,奄美大島における捕獲作業困難地の1つの落石防止ネットで覆われた地帯(長さ約1km×幅約50m)を対象として,ダイファシノン含有のソーセージベイトによる化学的防除の実施を計画している.効果判定はセンサーカメラによる.また,地域住民や狩猟者などに対して理解協力のための合意形成活動を行った.


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